マーケ業界人がよく話す「ファーストペンギン」話の嘘。誰だって本当は危険を冒したくない

コンテンツプロデューサー・高瀬敦也が様々な人を招き、コンテンツについて飲み屋でざっくばらんに語り合う不定期連載企画。2回目のゲストは、Twitterを通じて膨大な数の人に会い、日々「奢られる」活動をしているプロ奢ラレヤー・中島太一氏。何も実績がないところから、Twitterひとつで注目を集め、現在フォロワー数8万人を超える中島さん。最終回の今回は、マーケティング業界の常套手段って本当なの? この先受けるコンテンツは何か? に斬り込みます!

コンテンツプロデューサー・高瀬敦也のコンテンツと〇〇 ゲスト/プロ奢ラレヤー・中島太一氏 第4回

◆ファーストペンギンの嘘。誰も、本当は死にたくない。それが正しい進化

高瀬:別に大した話じゃないんだけど、親父から言われて響いてるのが、「幸福は死ぬ瞬間で決まるんだよ」っていう話。例えば、満たされて、モテまくって、お金も一杯あって、みんなから羨ましがられながら生きてきても、死ぬ直前に「全部嘘だよー」って言われたら地獄だし、その逆もしかりだし、と。

中島:その辺はもう死生観ですよね。僕は、明日のことを考えないんですよ。「波」があればいいかなって感じです。めちゃくちゃ美味しいものを食べて、それが美味しいかと言われたらそうだけど、高級寿司がうまいのは、100円寿司があるからで。10日間連続で高級寿司を食べたら、それは日本人がライスを食ってるのと同じ。だったら、3日間絶食して、パンを食ったほうがうまい。それってどんな人生を送ってる人でも同じじゃないですか。

高瀬:あえて広げますけど、一般論として、「その瞬間を生きろ」的な話があるじゃないですか。先々のこと考えてばかりいて、「あなたはいつ今を生きるんですか?」的な話。多くの人はなかなか今の瞬間を生きられずにいると。

中島:たぶん、その人たちは正しいんですよ。それが、正しい進化。僕は狩猟採集民で、農民じゃない。農民は来週のことを気にしなかったら死ぬ(笑)。だけど、狩猟をしてる人って、今日マンモスを狩ったりしてればいい。みんなは1年後にどれだけの獲れ高があるか、を考えて生きていくのが正しいという価値観で生きている。僕はなぜかそれができなかったから、狩猟採集民のまんま(笑)。同じところに住みたくないし、同じ人に会いたくない。

高瀬:中島さんみたいな人って、20年前に生まれてたらやばかったですよね(笑)。

中島:死んでますね(笑)。たまたま、いい環境をつくることができて、そこで色んな情報や知識が入ってきたし、データもロジックも揃ってるから、それなりの出力はあるけど、元は「お前これで生きる自信ある?」っていうような、すごいポンコツのモデルで生まれてるから(笑)。マンモスを狩ってる人とディティールが同じ。

それが、たまたま前の人が、大富豪で革命を起こして評価される時代に変わった、みたいな感じです。実態はこうなんだけど、周りからみると美化されがちなので、「今、キテますね」とか言われますけど。メディアがどう扱おうと全然気にしない人間なので、かまわないですけど。

高瀬:「今、キテますね」ですか(笑)。

中島:「ファーストペンギン」って話、あるじゃないですか。あれはでっち上げで、ただ押されてるだけなんですよ。たまたま落ちたら敵がいなくて、魚を食えてるだけ。基本的に生物って、飛び込むのが嫌なんですよ。後ろの人からしたら、飛び込んだ人の動機は見えない。実は、それ以外できなかった、というのが大半なんじゃないかと思います。たまたまそういう人の中の1000分の1が浮上して、「あいつは強い意思と勇気を持って飛び込んでいったから、ああなれたんだ」という風に外の人は思っていますが、実際はそんなことない。絶対、飛び込みたくない(笑)。2番手にいたら魚は食えるわけで。

1番手で行ってたらふく食うほど、危険を晒したい奴はそんないねえだろって。そのために死ぬ覚悟がある奴って中々いない。ファーストペンギンって、毎回飛び込んでたら絶対いつか死ぬわけで(笑)。今は、社会がひっくり返ったから、こういう人間が生きやすくなってるわけですけど。

◆近い将来、例え話は機能しなくなり、マスコンテンツの価値は爆発的に上がる

高瀬:少し話が変わりますけど、僕がテレビ局に入った当時、上司の人たちが共通言語にしてる例え話って映画だったんです。その頃は20代前半で昔の映画はそんなにたくさん見ていなかったし、何言ってるかわからなかった。だけど、僕らの世代だけで企画会議をすると、例え話はテレビ番組になっていた。この差は大きくて。その時から、そのうちみんなゲームでコンテンツを語るようになるよね、と話をしていて。

中島:なるほど。僕の世代はテレビよりゲームのほうでやってました。

高瀬:そうですよね。もっと言うと、YouTuberだろうし、ソシャゲになってきますよね。

中島:そうですね。段々、例え話自体が機能しなくなると思っています。仮にYouTuberで、「SUSURU TV.の…」って例えても、刺さる人には刺さるんですけど、ニッチだから知らない人もいる。マスコンテンツみたいなものはどんどん消えていって。

高瀬:なくなる、なくなる。それは、間違いない。

中島:だからこそ、その人のことをちゃんと知って、わかるようにしてあげるのはすごく大事になってきますよね。「この話をしておけばOK!」みたいなものがあると、社会って上手に回るじゃないですか。僕も人と話す時に例え話をしますけど、初めて会うと前半は全然できないですから。相手が何を見て育っていて、どういう世界観かがわからないので。

高瀬:たしかに。一方でマスコンテンツの価値は、爆発的に上がりますよね。残ってるものになるけど。ジャイアンツとかディズニーランドとか。

中島:そうですね。一度大きいパイを占めたら、それは強いよね、という。「なんで宗教は残ってるの?」みたいな話ですよね。

高瀬:マスコンテンツが減ってくのは必然だと思うんだけど、一方で「なんでだろう?」と。テクノロジーの進歩はあるだろうけど、人間がそもそも求めていたり、見えざるものの意思としてそうなっていくわけじゃないですか。基本、人間って民度も上がっているし、幸福に向かって進んでると思ってるので、もしかしたら、人間が根源的にストレスからの解放を願っているのかもしれない。マスからの解放によってストレスを感じる機会が減る、という仮説もある。

中島:そうですね。実際、僕の下の世代はみんなYouTubeを見てる。そして、みんな見てるYouTuberが違う。見る情報が違えば、感じるものも違う。

高瀬:笑いを共有できる幸せ、ってあるなと思っていて。世代に関係なく共有できるものがなくなってくるのは、「どうなんだろう」と思ってたんだけど。そもそもない方が幸せだという風に考えると、そうなんだなと思って。

中島:共感と反感は同じですからね。僕は基本、共感はしないですね。しそうだな、と思ってもしないようにしてるというか。人は「同じだ」と思うと、理解しようとしなくなるから。

◆マーケティングの常套手段は共感。それって本当?

高瀬:あえて言いますが、マーケティングの常套は共感だと言われるじゃないですか。そういう意味では、もはや次のステージは共感じゃないのかもしれないね。

中島:そうですね。共感の総量って、その時代にどれだけ人が苦悩しているのかと、比例しますよね。今の日本はみんな悩んでるから、共感するようなコンテンツがめちゃくちゃ売れる。

高瀬:そうなってくると、もう共感自体がフェイクかもしれないですね。「共感したい!」と思ってる人のためのものだったり。

中島:そうですね。高瀬さんの本にも書いてあったと思うんですけど、マーケティングは一つデカいパイをとって、そこからどう狭めるか、どこに向けてやっていくかだと僕も思っていて。テレビや雑誌は、パイとして共感を取りにいってる。それが数字も取れるし、儲かるからやってる。だけど、YouTubeは共感を売ってない、全然媚びてない。たまたまそれに共感する人はいても、自分から取りにいってないんですよね。

高瀬:共感って、やっぱり情報だもんね。

中島:もちろん、共感コンテンツで面白いものもあるんですけどね。僕が最近見てるのは50歳のYouTuber。リタイアして、いかに自分はお金持ちに近づくかってやってるんです。でも、「贅沢やめられねえ」とか言って、毎月残高が減っていくんですよ(笑)。これがなぜ面白いかって、社会が将来に対する漠然とした不安を抱えるなか、50歳の人が「また減っちゃった」みたいにやってるところだと思うんです。今の日本の状況じゃないと面白くならないコンテンツだから、そこは大事だと思って。

高瀬:共感は受け手が見つけるものですよね。拾いに行くものじゃない。それってやっぱり、ドキュメントじゃなきゃダメなんですよ。

中島:そうそう! だから置いてあるものがいいなと。共感に関しては。

高瀬:ドキュメントですよね。中島さん自身もそうだし、50歳のYouTuberもそうだと思う。

中島:そうですね。僕に集まってくる人も、価値観に対する反発という意味での共感もあるだろうし、単純に面白いもの見たさもあるだろうし。なんなんでしょうね。よくわかんないものって、みんな好きじゃないですか。色んなコンテンツがありますけど、変わってますよね。何が受けるかって。

高瀬:何が受けるかなんてわからないですよ。わかったら、預言者笑。中島さんが20年前に生まれてたらやばいですよね、みたいなお話ししましたけど、もしかしたらめちゃくちゃ社会システムに順応して生きていたかもしれない。

中島:そうかもしれないですね。わからないですけど。今の状態を安定と呼ぶんだったらそうだし、押し付けられたストレスと自分から取りに行ったストレスは全然違いますよね。筋トレって、ストレスじゃないですか。でも、自分から取りに行った人は、楽しそうにやってる。物理学的にみたらストレスを与えられてるだけなのに。

高瀬:多くの人が「好きなことをやりなさい」って意訳しちゃってるじゃないですか。それはピンときづらい。でも、今おっしゃったように、自分から取りに行ったストレスなのか、というふうに言い換えてあげると、ピンと来るかも。素晴らしい言い換えですね。

中島:僕はつまらない仕事は、お金渡されてもやりたくないんですよ。ほとんどの人はお金が価値のあるものという価値観だけど、僕からすると「何に使うの?」っていうところがあって。1000万円とかだったら良いですけどね。だったら、面白い人をキャスティングしてトークイベントやります、みたいな方が僕からしたらノーギャラでも得。自分が欲しいものなんだけど、社会的にはあまり価値を認められていなくて手に入りやすい、みたいなものはあります。それを取りに行くのが僕のテーマです。

高瀬:いやー、いい勉強になりました。

中島:いやいや、適当に喋っただけなんで(笑)。

高瀬敦也

株式会社ジェネレートワン代表取締役CEO。フジテレビのプロデューサーを経て独立。音声と写真のコンテンツプラットフォームアプリhearrの企画やマンガ原作・脚本制作、アイドルグループ、アパレルブランドのプロデュースを手掛けるなど、幅広いコンテンツプロデュース・コンサルティングを行っている。著書に『人がうごく コンテンツのつくり方』(クロスメディア・パブリッシング)

中島太一

プロ奢ラレヤー。22歳。年収1000万円の奢られ屋。Twitterを介して出会った様々な人に「奢られる」という活動をし、わずか6か月でフォロワー2万人を獲得。現在、フォロワー8万人超。

<取材・文/高橋孝介 撮影/Coji Kanazawa 取材協力/AOYUZU恵比寿>

―[高瀬敦也のコンテンツと〇〇]―

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